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DIRECTOR INTERVIEW

​光音座 ✕ 横山翔一監督インタビュー

本作は監督にとってOP映画での2本目の作品となりますが、なぜゲイ映画を撮ろうとお考えになったのですか?

そういえば前作『絶倫探偵 巨乳を追え!』(新橋探偵物語)で、伊神忠聡さんが演じた俳優の前張が劇中で主演したゲイ映画のタイトルが「たけしとかずよし」でした。

気づいたとき思わずニヤッとしてしまいましたが、じつはこの時すでにゲイ映画を撮りたいと考えていらっしゃったりしたのでしょうか。

 

横山翔一監督(以下、横山監督)|本作「強がりカポナータ」の脚本元タイトルは「たけしとかずよし ~俺たちのイタリアン」になります。

 実は「新橋探偵物語」で伊神さんが演じていた前張という役は前作にあたる「はめられて Road to Love」(TSUTAYA、GEOでレンタルできるので気になった方はぜひ)という映画にも登場していました。ゲイで役者という設定のキャラクターなのですが、このキャラが「新橋探偵物語」で俳優友達のハテナシに自慢げに自分の主演作を語るくだりで作ったゲイ映画のポスターが「たけしとかずよし」でした。伊神さんと折笠さんをお呼びしてふんどしを履かせてポスター撮影をし、煽り文句のために簡単なあらすじを考えているうちに、この二人でゲイピンク映画を実際に撮ってみたい、と思い立ちました。(その頃はマフィアと潜入捜査官の悲恋の物語で、インファナル・アフェアのようなお話の映画を想定していました)

  ハテナシを演じた長野こうへいさんが新郎役で出ていたり、社長のゴンザ役の近藤さんが父親役で出ていたりと「新橋探偵物語」に登場する制作会社「ゴウカンパニー」が作ったゲイピンク作品としても楽しめるように作っています。

 

単刀直入にうかがいますが、なぜ「カポナータ」なんですか?

 

横山監督|映画のモチーフになるイタリア料理を考えると、あまりポピュラーなものではこの映画の雰囲気にそぐわないと感じました。何かいい料理はないかと考えていたところ、ふとラタトゥイユのような素朴な料理にするのはどうかと思い、イタリア料理に似たものがないかと探してみると、イタリア版ラタトゥイユともいえるカポナータに行き着きました。

 カポナータはナスを中心とした野菜をトマト味の甘酢煮にしたものですが、たけしというナスを中心に3人の男たちという具材が溶け合う物語にふさわしい、モチーフになっていると今では思ってます。まさかタイトルになるとは思っていませんでしたが。

本作に出演された俳優さんたちはまるで当て書きしたかのように役にはまっていたと思います。

伊神忠聡さん、折笠慎也さん、後藤剛範さんについて、一言ずつお願いします。

 

横山監督|伊神忠聡さんは学生時代に共演したのが出会いなのですが、その頃から繊細な受け芝居をする、渋くていい役者さんだなと思っていました。静かに耐えている主人公・たけしの姿が映画の中心にあり、そこに出入りする男たちや取り巻く家族の環境をたけしの目で見つめていくような映画になったのは、そのような芝居に伊神さんの真骨頂があると考えたためです。

 

折笠慎也さんは数年前のゆうばり映画祭で出会いました。ゴーヤで妻を斬り殺すという荒唐無稽な役を昭和の銀幕スターさながらカッコよく演じられていたのを覚えています。当初の予定ではファム・ファタール感はそこまで強くなかったのですが、芝居を見ていると魔的なものを感じたので、最終的にかずよしは背徳のセックスを体現したようなキャラクターとして描きました。

 

後藤剛範さんもまた学生時代からの舞台仲間です。アキラはファンタジー色が強く難しい役柄でしたが、「純粋な存在」として真っ直ぐに演じて下さいました。たけしとかずよしのセックスが人間同士の愛憎を象徴するのに対し、アキラとのセックスは自然から見たちっぽけな人間を象徴するのかなと個人的には思っています。そんな何を言っているのかよく分からない難しいシーンが形になったのは、後藤さんの懐の深い芝居に拠るところが大きいと感じています。

 

最後にピンク映画ファンに一言お願いします。

 

横山監督|たけしとかずよしとアキラ、どの男が一番魅力的かよくスタッフとも話しているのですが、皆さんにとってはいかがでしょうか。時に力強く、時に優しく繊細なセックスを、スクリーン上の役者たちの躍動を、楽しんで頂ければこれ以上の喜びはありません。

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